【前回までの簡単なあらすじ】
プラグを抜いたら先っちょがなくなっていた。
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これを男女の営みにたとえると男性にとっても女性にとってもその恐怖がたいへんわかりやすくてよいのですが、しかしこんなことで有害指定を受けてもつまらないし、もうすこし教育的に配慮したかたちで再現してみましょう。
ある一人の紳士がカプセルホテルに泊まっています。
通常の起床後は言うまでもなくこうですが
実際には起きたらこうなっていたのです。
これだけでも十分に猟奇的でおそろしい話だとおもいますが、不幸なプラグ氏の首についてはこの際しかたがありません。また別のプラグ氏を連れてくればよろしい。問題は彼の頭がぽろっと取れてしまったことよりも、部屋の枕元に生首を放置したままではホテルが機能しなくなる、という点にあるのです。
この状態ではとても次の客を入れる(=別のプラグをさしこむ)ことなどできないし、しかもこのホテルときたらそもそも部屋がこの一室しかありません。
傾けて転がり出てくれるならよいけれど、実際にはこの空間が数ミリの直径しかなく、おまけに内部でしっかりと固定されています。ピンセットもろくすっぽ入らない状態で、いったいこれをどうやって取り出せというのか?
経年による老朽化ならあきらめもつきましょう。あるいは気軽に「まあいいや、ホテルの1軒や2軒」と肩をすくめることができるならそれもよろしい。しかし手に入れたのはついひと月くらい前の話だし、元よりそれをうっちゃれるほど太い腹を持ち合わせてもいないのです。これが恐怖でなくて何だというのだ。
しかし打てる手がなさそうに見えるからといって、手をこまねいているわけにもいきません。ムチャをすればすべてが台無しになるかもしれないけれど、といって何もしなければしないで使えないのだから結果としては同じです。どうせ散るなら華々しく散りたい。
そう開き直ってピンセットの先端をムリにごりごり突っ込んでいたら、今度は「カラン」と妙な音がするのです。
カラン?
というのはつまり何かが転がり落ちた音であり、何かが転がり落ちるとすればそれはもうほぼまちがいなく先の生首であり、しかも「落ちる」ということはそれまで行き止まりだとばかりおもっていた空間の先にじつはさらなる空間が広がっていたらしいことを意味しています。
たぶんこういうことだとおもう。
ますます取り出せなくなった!
…
とおもって一瞬絶望したんだけど、よく考えたらひとまず生首が枕元にないのだから素知らぬ顔で次の客を入れることはできそうじゃないか…
そういうわけで、カプセルホテルは今日も元気に稼働中です。生首は今も転がり落ちたままだけど、愛さえあれば関係ないよね!
※注:オーディオインターフェイスとそこに差し込んだ標準プラグの話です。